Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(五)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(五) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 215.744 Zeichen · 434 Bildschirme
「文字吉はどうしました」
「文字吉は二階にいました」と、老人はその光景を思い泛かべるように顔をしかめた。「ちらし髪で、真っ蒼な顔をして、まるで幽霊のような姿で、だらし無く坐っていました。なにを訊いても碌に返事をしない。戸棚の中がおかしいので、念のために明けてみると、そこに若い女役者の死骸がある。小三津が絞め殺されているんです」
「文字吉が殺したんですか」
「勿論、文字吉の仕業です。前にも云う通り、文字吉には女の関係者がたくさんあるんですが、こういう女に限って不思議に嫉妬深い。それで、このごろ小三の楽屋へはいって来た照之助と、小三津が人一倍に仲よくするというのがもとで、小三津を自分の二階へ呼び付けて、やかましく責め立てる。云わば女同士の痴話喧嘩、それが嵩じて文字吉は半狂乱、そこにあった手拭をとって小三津を絞め殺してしまったが、さてどうするという分別もなく、死骸を戸棚へ押し込んだままで、自分はその張り番をするように、唯ぼんやりと坐っていたんです。それも十二日、照之助が角兵衛の腕を斬ったのと同じ晩のことで、狭い土地にいろいろの事件が湧いたものです。その翌日も、又その次の日も、文字吉は碌々に飲まず食わず、自分も半分は死んだようになって、その戸棚の前に坐り込んでいるところへ、わたくし共が踏み込んだのでした。