Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.831 Zeichen · 396 Bildschirme
しかもそんな愚痴を云っている場合ではない。しょせん蘇生の望みがないと諦めた以上、医者の来るのを待っているまでもなく、一刻も早く黒沼の家へ駈け付けて、この出来事を報告して来なければなるまいと思ったので、彼は死骸の番を寺僧に頼んで表へ出た。
寺では提灯を貸してくれたので、長三郎はそれを振り照らして出たが、風が強いのと、あまりに慌てて駈け出した為に、寺の門を出てまだ三、四間も行き過ぎないうちに、提灯の火はふっと消えてしまった。また引っ返すのも面倒であるので、さきを急ぐ長三郎は暗いなかを足早に辿って行くと、どこから出て来たのか、突き当たらんばかりに、ひとりの男が小声で呼びかけた。
「あ、もし、もし……」
不意に声をかけられて、長三郎はぎょっとして立ち停まったが、相手のすがたは闇につつまれて見えなかった。
「あのお侍さんは死にましたか」と、男は訊いた。
なんと答えていいかと、長三郎はすこし躊躇していると、男は重ねて云った。
「あのかたは何と仰しゃるんです」
長三郎はこれにも答えることは出来なかった。黒沼伝兵衛が往来なかで訳のわからない横死を遂げたなどと云うことが世間に洩れきこえると、あるいは家断絶というような大事になるかも知れないのであるから、迂闊な返事をすることは出来ない。