Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(六)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(六) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 196.831 Zeichen · 396 Bildschirme
それから半月余りは何事もなくて過ぎた。二月に入っていよいよ暖かい日がつづいて、ほんとうの蝶もやがて飛び出しそうな陽気になった。その十二日の午過ぎに、長三郎は父の使で牛込まで出て行ったが、先方で少しく暇取って、帰る頃には此の頃の春の日ももう暮れかかっていた。江戸川橋の袂まで来かかると、彼は草履の緒を踏み切った。
自分の家まではさして遠くもないのであるが、そのままで歩くのは不便であるので、長三郎は橋の欄干に身を寄せながら、懐紙を小撚りにして鼻緒をすげ換えていると、耳の端で人の声がきこえた。それが何だか聞き覚えのあるように思われたので、長三郎は俯向いている顔をあげると、二人の男が音羽の方向へむかって、なにか話しながら通り過ぎるのであった。ひとりは屋敷の中間である。他のひとりは町人ふうの痩形の男であった。どちらもうしろ姿を見ただけでは、それが何者であるかを知ることは出来なかった。その一刹那に長三郎はふと思い出した。
「あ、あの時の声だ」
黒沼伝兵衛の死を報告するために、暗やみを駈けてゆく途中で突きあたった男――その疑問の男の声が確かにそれであったことを思い出して、長三郎の胸は怪しく跳った。