Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(四) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 217.272 Zeichen · 434 Bildschirme
「平公にも逢わねえ。あいつもどうしたのかな」
床の中で挨拶もしていられなくなって、お国は寝衣のまま起きて出た。お国はことし二十三の若い女房で、子どもがないだけに年よりも更に若くみえた。表の戸をあけて彼女がその仇めいた寝乱れ姿をあらわした時、往来はもう薄明るくなっていたので、表に立っている男の顔は朝の光りに照らされていた。かれは隣り町に住んでいる建具屋の藤次郎で、脚絆に麻裏草履という足ごしらえをしていた。
「平さんにも逢わず、内の人にも逢わず、みんなは一体どうしたんでしょうねえ」と、お国はすこし不安らしく云った。
「まさかおいら一人を置き去りにして、行ってしまった訳でもあるめえが……」と、藤次郎も首をかしげていた。
鋳掛屋の庄五郎は隣り町の藤次郎と露月町の平七と三人連れで、きょうは川崎の大師河原へ日がえりで参詣にゆく約束をして、たがいに誘い歩いているのは面倒であるから、七ツ半までに高輪の大木戸へ行って待ちあわせるということになっていたのである。その三人のうちで藤次郎が一番さきに出て行ったらしく、大木戸のあたりに他の二人の姿がまだ見えないので、しばらくそこらに待ちあわせていたが、海端の朝は早く明けて、東海道の入口に往来の人影もだんだんに繁くなる頃まで、庄五郎も来ない、平七もみえないので、藤次郎も不思議に思った。