Japanische Klassiker mit Furigana
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ばんか
晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 晩夏 (ばんか) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.249 Zeichen · 27 Bildschirme
そんな事をして胸でも痛み出したら、それこそ取り返しのつかない身体だった。
妻はそういう私にすぐ気がつくと、寂しそうに顔を伏せていた。
*
湖の水がずっと向うまで引いているのをいい事に、私達は渚づたいに宿の方へ帰って往った。
葭がところどころに群生している外には、私達の邪魔になるようなものは何物もなかった。一箇処、岸の崩れたところがあって、其処に生えていた水楢の若木が根こそぎ湖水へ横倒しにされながら、いまだに青い葉を簇がらせていた。私達はその木を避けるために、殆ど水とすれすれのところを歩かなければならなかった。が、その時でさえ、湖の水は私達の足もとで波ひとつ立てず、又、何のにおいさえもさせなかった。それでいて、湖全体が何処か奥深いところで呼吸づいているらしいのが、何か異様に感ぜられた。
「Zweisamkeit! ……」そんな独逸語が本当に何年ぶりかで私の口を衝いて出た。――孤独の淋しさとはちがう、が殆どそれと同種の、いわば差し向いの淋しさと云ったようなもの、そんなものだって此の人生にはあろうじゃあないか?
「そうだろう、ねえ、お前……」私は口の中でそんな事をつぶやくように言って見た。