Japanische Klassiker mit Furigana
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くらがりのおとまつ
暗がりの乙松
山本 周五郎
Lesen Sie 暗がりの乙松 (くらがりのおとまつ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.992 Zeichen · 25 Bildschirme
お主をもらってみせるだ」
「じゃあ嫌やしねえだの?」
「お稲さこそおらを忘れるでねえだぞ」
娘は身を顫わせながら、とびつくように男の頸へ手を回した。むせるような女の肌の匂いに男は胸を戦かせつつ、ひしひしとお稲を逞しい両腕で抱緊めた。――若草の伸びる甘い唆るような匂いが、昼のほど良く蒸れあがった土の香ともつれあって、若い二人を忘我の境へ置去るのだった。
この丘を北へ、だらだらと下ったところに、土蔵二戸前、別棟の厩を一棟も持った大百姓らしいひと構えがある――修善寺から裏道伝いにやって来た野火の三次と梅田屋の二人。三次は丘下の杉林の中に足をとめて、
「あの家でござんす」
と指さした。
「なんだえ、仕事というのは百姓家か」
「百姓は百姓でも上畑の嘉兵衛といって、この界隈じゃ名の知れた物持でござんす」
「お前ひどく精しいの」
「めどをつけるからにゃ洗ってありまさあ、しかも今日はちょいとまとまった現金が入っているはず、親分などが御覧なすったら、ほんの悪戯仕事かも知れませんが、まあお目見得の手土産代り、どうか見てやっておくんなさい」
「まあやってみろ」
「へえ、ちょいと御免を蒙ります」