Japanische Klassiker mit Furigana
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つきのまつやま
月の松山
山本 周五郎
Lesen Sie 月の松山 (つきのまつやま) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.451 Zeichen · 41 Bildschirme
の家名が絶えてもいいと思った、そうして、それが望みどおりになったのに、――まもなく桂と祝言をし、茂庭の跡を継ぐことになったのに」
孝也は熊の仔の前で立停った。
黒い毛毬のように、ころころした仔熊であった。太い首輪をはめ、鎖で柿ノ木に繋がれたまま、ひとりでむきになってじゃれていた。誰かが玩具に与えたのだろう、二尺ばかりの松薪に向って、威嚇の唸りをあげたり、手で押えつけて噛んだり、うしろへさがって、突然とびかかったりする。そしてときどき(ひどく自慢そうに)横眼で孝也のほうを見たりした。
「こいつは捉まって、鎖で繋がれている」と孝也は呟いた、「だが鎖を噛切って逃げることもできる、おいちび、おまえは逃げることができるんだぞ――おれは首輪もはめられてはいないし、鎖で繋がれてもいない、しかし確実に捉まってしまった、おれを繋いでいる鎖は眼に見えないが、どんなことをしても断ち切ることはできない、おれは逃げることができないんだ」
眼に見えないその鎖が、(現実に)非常な力で彼を緊めつけるようであった。孝也は大きく喘いだ、苦悶の衝動とたたかうために、大きく深く喘ぎながら、彼はそこを離れて自分の住居のほうへ歩きだした。