Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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つきのまつやま

月の松山

山本 周五郎

Lesen Sie 月の松山 (つきのまつやま) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.451 Zeichen · 41 Bildschirme

Aozora Bunko

という料理屋へ馬を預け、そこから歩いて花崗道円の家へゆくのである。――いつかは(それもそう遠いさきではない)わかることだろうが、「そのとき」が来るまでは人に知られたくなかった。日も夜も、彼を捉まえて放さない恐ろしさと絶望感とは、彼以外の誰にも理解されるものではない。それを知られて、憐れまれたり同情されたりすることは、苦痛を二重にするばかりである。彼はどんなことをしても、その事実を知られないようにとつとめた。

治療を受け、薬をもらって出ると、孝也は「藤十」へ戻って酒を飲んだ。半月ほどまえから患部が痛みだして、痛みを止める薬を用いるようになっていた。

「この薬が倍量になったら」と道円は云った、「お気の毒だがどうか諦めて下さい」

諦めるという意味は明瞭である。孝也は酒を飲みながら、今日もらった薬の量が、明らかに殖えていることを思った。

「来なければ押しかけてゆくさ、こんどは必ずものにしてみせる」

隣り座敷で客たちの話しているのが聞えた。三人ばかりいるらしい、もう酔っているとみえて声が高く、こちらへ筒抜けに聞えて来た。

――酔わなければならない。

孝也は汁椀の蓋でぐいぐい飲んだ。