Japanische Klassiker mit Furigana
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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
Lesen Sie 本州横断 癇癪徒歩旅行 (ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう) von 押川 春浪 (おしかわしゅんろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.749 Zeichen · 45 Bildschirme
(一三)駆落の落書
剛力は無論自分の汗だから平気である。得意になってムシャムシャ頬張っている面の癪に触る事!
吾輩等は握飯を失ったので仕方なく、コーンビーフの缶詰を切り、握飯の中の梅干だけはまさか汗漬にもなるまいと、塩からい冷肉をパク付き、梅干をしゃぶっている心細さ!
(一三)駆落の落書
このミゼラブルな夕食を終ったのは、午後の九時前後であったろう。夜は暗く、ただ焚火の光の空を焦がすのみ。雨は相変らずショボショボと降り、風は雑草を揺がして泣くように吹く、人里離れし山巓の寂莫はまた格別である。
廃殿の柱や扉には、曾てここを過ぎた者の記念と見え、色々様々の文字が記してあるが、中にこんな事も書いてあった。
「明治四十三年十月二十日、黒羽町万盛楼の娼妓小万、男と共に逃亡、この山奥に逃込みし筈、捜索のため云々――」
と、捜索に来た人間の名も麗々と記してある。こんな山奥に逃込むとは驚いた女もあるものかな、もしや男と共に谷間へ投身でもしたのではあるまいか、どこかそこらの森林で首でも縊って死んだのではあるまいかと思うと、余り好い気持はせぬ。
その内に夜はシンシンと更けてくる。しかしまだ寝るには早い。