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Japanische Klassiker mit Furigana

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むらいちょうあんないれのからかさ

村井長庵記名の傘

国枝 史郎

Lesen Sie 村井長庵記名の傘 (むらいちょうあんないれのからかさ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.794 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

もうこうなりゃア一両も厭だ。口惜しかったら腕で来い。それとも白砂へ駆け込むか。気の毒ながら手前だって、明い体じゃよもあるめえ。自繩自縛とは汝がこと、ハイ左様なら俺は行く。二度と呼ぶな返りゃしねえぞ」

尻ひっからげ駆け出す長庵、五間あまり行き過ぎた。

ギーという扉の開く音。ヒラリと刎ねたは駕籠の垂。生白い物の閃めいたは、女の腕に相違ない。

「ワッ」と云う長庵の声。ガックリ膝を泥に突き、手を廻すと脛に立った、小柄をグイと引き抜いたが、

「や、こいつア銀の平打! さては手前は!」と振り返る、その眼の前にスンナリと駕籠に寄り添い立った姿、立兵庫にお裲襠、大籬の太夫職だ。

「ううむ、そうか、女泥棒!」

「あいさ、妾ア花魁泥棒! こう姿を見せたからにゃア、半金では不承だよ」

「何の手前に」と懐中を抑える。

「おや、よこすのが厭なのかえ」

「世に名高けえ泥棒でも、たかが女、滅多にゃ負けねえ」

「おお、そうかえ、ではお止し」

繊手を延ばすと髪へ障わり、

「もう一本見舞おうかね。左の眼かえ右の眼かえ。それとも額の真中かえ」

長庵は黙って突立っている。

突然財布を投げ出した。

「上にゃ上があるものだなあ」