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Japanische Klassiker mit Furigana

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とうじょうき

東上記

寺田 寅彦

Lesen Sie 東上記 (とうじょうき) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.356 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

右には未だ青き稲田を距てて白砂青松の中に白堊の高楼蜑の塩屋に交じり、その上に一抹の海青く汽船の往復する見ゆ。左に従い来る山々山骨黄色く現われてまばらなる小松ちびけたり。中に兜の鉢を伏せたらんがごとき山見え隠れするを向いの商人体の男に問う。何とか云いしも車の音に消されて判らず。再三問いかえせしも訛の耳なれぬ故か終にわからず。気の毒にもあり可笑しくもあれば終にそのままに止みぬ。後にて聞けば甲山と云う由。あたりの山と著しく模様変れるはいずれ別に火山作用にて隆起せるなるべし。これのみは樹木黒く茂りたり。

蝉なくや小松まばらに山禿たり

など例の癖そろ/\出で来る。大阪にて海南学校出らしき黒袴下り、乗客も増したり。幸いに天気あまり暑からざればさまでに苦しからず。山崎を過ぐれば与一兵衛の家はと聞けど知る人なし。勘平らしき男も見えず、ただ隣りの男の眼付やゝ定九郎らしきばかりなり。五十くらいの田舎女の櫛取り出して頻りに髪梳るをどちらまでと問えば「京まで行くのでがんす。息子が来いと云いますのでなあ」と言葉つき不思議なるを、国はと問えば広島近在のものなる由。飾り気一点なきも樸訥のさま気に入りてさま/″\話しなどするうち京都々々と呼ぶ車掌の声にあわたゞしく下りたるが群集の中にかくれたり。