Japanische Klassiker mit Furigana
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とうじょうき
東上記
寺田 寅彦
Lesen Sie 東上記 (とうじょうき) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.356 Zeichen · 17 Bildschirme
京に入りて息子とかの宿に行くまでの途中いさゝか覚束なく思わるゝは他人のいらぬ心配かは知らず。やがて稲荷を過ぐ。伏見人形に思い出す事多く、祭り日の幟立並ぶ景色に松蕈添えて画きし不折の筆など胸に浮びぬ。山科を過ぎて竹藪ばかりの里に入る。左手の小高き岡の向うに大石内蔵助の住家今に残れる由。先ずとなせ小浪が道行姿心に浮ぶも可笑し。やゝ曇り初めし空に篁の色いよ/\深くして清く静かなる里のさまいとなつかしく、願わくば一度は此処にしばらくの仮りの庵を結んで篁の虫の声小田の蛙の音にうき世の塵に汚れたる腸すゝがんなど思ううち汽車はいつしか上り坂にかゝりて両側の山迫り来る。山田の畔にしれいのごとき草花面白きは何と云うものにや。この辺りまで畑打つ男女何処となく悠長に京びたるなどもうれし。茶畑多くあり。春なれば茶摘みの様汽車の窓より眺めて白手拭の群にあばよなどするも興あるべしなど思いける。大谷に着く。この上は逢坂なり。この名を聞きて思い出す昔の語り草はならぶるも管なるべし。さねかずらとはどんなものかしらず、蔦這いでる崖に清水したゝって線路脇の小溝に落つる音涼し。窓より首さしのべて行手を見るに隧道眼前に然として向うの口銭のまわりほどに見ゆ。