Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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とうかいどうごじゅうさんつぎ

東海道五十三次

岡本 かの子

Lesen Sie 東海道五十三次 (とうかいどうごじゅうさんつぎ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.849 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

これが禅とか風雅というものかな」

と言って笑った。

「さあ、これからが宇津の谷峠。業平の、駿河なるうつの山辺のうつゝにも夢にも人にあはぬなりけり、あの昔の宇都の山ですね。登りは少し骨が折れましょう。持ちものはこっちへお出しなさい。持っててあげますから」

鉄道の隧道が通っていて、折柄、通りかかった汽車に一度現代の煙を吐きかけられた以後は、全く時代とは絶縁された峠の旧道である。左右から木立の茂った山の崖裾の間をくねって通って行く道は、ときどき梢の葉の密閉を受け、行手が小暗くなる。そういうところへ来ると空気はひやりとして、右側に趨っている瀬川の音が急に音を高めて来る。何とも知れない鳥の声が、瀬戸物の破片を擦り合すような鋭い叫声を立てている。

私は芝居で見る黙阿弥作の「蔦紅葉宇都谷峠」のあの文弥殺しの場面を憶い起して、婚約中の男女の初旅にしては主人はあまりに甘くない舞台を選んだものだと私は少し脅えながら主人のあとについて行った。

主人はときどき立停まって「これどきなさい」と洋傘で弾ねている。大きな蟇が横腹の辺に朽葉を貼りつけて眼の先に蹲っている。私は脅えの中にも主人がこの旧峠道にかかってから別人のように快活になって顔も生々して来たのに気付かないわけには行かなかった。