Japanische Klassiker mit Furigana
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りゅうえいひろくかつえぐら
柳営秘録かつえ蔵
国枝 史郎
Lesen Sie 柳営秘録かつえ蔵 (りゅうえいひろくかつえぐら) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.933 Zeichen · 27 Bildschirme
で、家斉はどうがなして、お杉の秘密を知ろうとした。
ある日お杉は偶然、宿下りをした召使の口から、市中の恐ろしい噂を聞いた。それは「夫婦斬り」の噂であった。
「人を殺したその後で、その辻斬りの侍は、さも恋しさに堪えないように『お杉様!』と呼ぶそうでございます」
「お杉様と呼ぶ? お杉様と?」
お杉は思わず鸚鵡返した。
彼女には辻斬りの侍の、何者であるかが直覚された。
「三之丞様に相違ない」
彼女は固くこう思った。恋する女の敏感が、そういう事を感じさせたのであった。お杉様と呼ばれる若い女は、この世に無数にあるだろう。お杉様と呼ぶ侍も、この世に無数にあるだろう。しかしお杉はその「お杉様」が、自分であることを固く信じた。そうしてそう呼ぶ侍が、三之丞であることを固く信じた。
「気の毒なお方。……三之丞様。……そうまで兇暴になられたのか。……妾には解る、お心持が。……では妾も覚悟しよう。……妾はかつえ蔵へ入ることにしよう。……あのお方のために。……三之丞様のために」
7
浅草の夜は更けていた。馬道二丁目の辻から出て、吾妻橋の方へ行く者があった。子供かと思えば大人に見え、大人かと思えば子供に見える、変に気味の悪い人間であった。