Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

は勝手の入口に続いている。捨吉は勝手の入口の方からお母さんを案内しようとして、丁度そこで河岸の樽屋の娘に逢った。捨吉が学校から戻って来る度によく見かけるのはこの娘だ。娘は捨吉親子に会釈して表の方へ出て行った。

「さあ、お母さん、どうぞお上んなすって下さい」

と田辺のおばあさんは逸早く竈の側まで飛んで出て来た。

「捨さん、お前さんもまた玄関の方から御案内すれば可いのに」

と田辺の姉さんもそこへ出て来て、半ば遠来の客を持成顔に、半ば捨吉を叱るように言った。

「御待ち申していました」

と小父さんまで立って来て、お母さんを迎えた。

田辺のおばあさんの亡くなった連合という人と、捨吉のお父さんとは、むかし歌の上の友達であったとか。幾年か前には、お父さんは捨吉を見るために一度上京したことがあって、田辺の家の一番苦しい時代に尋ねて来た。お母さんはまた、田辺の家の人達の一番見て貰いたいと思うような日に訪ねて来たのであった。

奥座敷で起る賑かな笑声を聞捨てて、捨吉は玄関の方へ取次に出た。大勝の店に奉公する若いものの一人が旦那の使に来た。新どんと言って、いくらか旦那の遠い縁つづきに当るとかで、お店者らしく丁寧な口の利きようをする人であった。