Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
「どうだ、なかなか広かろう」
と小父さんもそこへ来て言って、住居と店との間にある硝子張の天井の下を捨吉と一緒に歩いて見た。
「以前の伊勢崎屋というものは、隣家の方と是方と二軒続いた店になっていたんだね。これが大勝へ抵当に入った。『どうだ、田辺、一つやって見ないか』としきりに大将が乗気に成ったもんだから、到頭俺も引受けちゃった。どうして、お前、新規に店を始めて、これだけの客が呼べるもんじゃない……隣家の方はまあ、ああして置いて、そのうちに仕切って貸すんだね」
こんな風に小父さんは大体の説明を捨吉にして聞かせた。この小父さんの足が帳場の側で止った時は、小父さんは何か思出したような砕けた調子で、
「なにしろ一銭、二銭から取揚げるんだからねえ」
と言って笑った。
捨吉は自分の身の置きどころから見つけて掛らねば成らなかった。彼は周囲を見廻した。そして実に勝手の違ったところへやって来たような気がした。店の入口の方へ行って見ると、丁度須永さんの居る高い帳場と対い合った位置に、壁によせて細長い腰掛が造りつけてある。そこには大勝の方から来た中での一番年嵩な、背の高い、若い番頭が他の連中を監督顔に腰掛けている。