Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
と兄は急に弟の読むのを遮った。捨吉はめったに見たことのない兄の怒を見た。
「そんな読み方があるもんか。ふざけないで読め」とまた兄が言った。
捨吉は自分の方へ圧倒して来るような、ある畏ろしい見えない力を感じた。真勢さんや新どん達の前で、自分に加えられた侮辱にも等しい忠告を感じた。
「僕は、ふざけてやしません」と言って、弟は兄の顔を見た。
「もっと、しっかり読め」と言う兄の声は震えた。
少時間の沈黙の後で、復た捨吉は読みつづけた。彼は目上の人に対してと言うよりも、むしろ益のない自分の骨折に向って憤りと悲みとを寄せるような心で。
「〆て」とやがて真勢さんが言出した。「私から読むか。九十五円二十一銭」
「九十三円二十銭」と新どんがそれを訂正するように言った。
「私のも」と吉どんが加せた算盤を見せるようにして。
「あ、その方が本当だ。何処で私は間違えたか」と言って真勢さんは頭を掻いて、「捨さん、それじゃお願い。総計九十三円二十銭。今日はまあ中位の出来だ」
「や、皆さん、どうも御苦労さま」
こう兄が言出すと、真勢さんも新どんも吉どんも同じように言い合った。夏の夜も更けた。