Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
閉めきった裏口の戸のところには古い造作の立てかけたのもある。芝居の楽屋でも見るように薄暗い床の上には荷造りに使う莚を敷いて、その上で皆昼寝した。真勢さんまでも来て捨吉の側であおのけさまに倒れていた。
呼起された吉どんは黙って土蔵を出て行った。続いて捨吉も出て行こうとした。もう九月らしい空気がその空屋の内までも通って来ていた。捨吉は裏口の方から僅かに射し入る熱い日の光を眺めて、ともかくもその一夏の間、皆なと一緒に手伝いして暮したことを思った。行きがけに、捨吉は真勢さんの方を振返って見た。「哲学者」と綽名のあるこの人は莚の上に高鼾だ。若いものよりも反ってこの人の方がよく眠っているらしかった。
「さあ、今度は誰の番だ。善どんが寝る番だ」
「善どんはもう先刻寝ましたよ。憚りさま、今度は私の番ですよ」
店の若いものは土蔵の裏口の黒い壁の側で、昼寝の順番を言い争っている。その間を通りぬけて、捨吉は勝手の方へ顔を洗いに行こうとすると、長い尖った舌を出しながら体躯全体で熱苦しい呼吸をしているような飼犬のマルの通過ぎるのにも逢った。
こうした周囲の空気の中で、捨吉は待侘びた手紙の返事を受取った。