Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
安息の無い、悩ましい、沈んだ心地で、捨吉は寄宿舎の部屋の方へ引返した。各の部屋は自修室と寝室との二間に分れている。寝室の壁によせて畳の敷いた寝台が作りつけてある。そこへ彼は身を投げるようにして、寝台へ顔を押宛てて祈った。
第三学年も終に近い頃であった。翌朝教室の方へ集って見ると、その学年の終にある英語の競争演説の噂がしきりとされている。下級の学生の羨望の中で、教授達の家庭へ一同招待された夜の楽しさなぞが繰返される。捨吉が同級の中には随分年齢の違った生徒が混っていた。「お父さん」と言われるような老成な人まで学びに来ていた。
エリス教授が教室の戸を開けて入って来た。教授の受持は主にエロキュウションなぞで有った。
「Now, Gentlemen ――」
とエリス教授は至極鄭重な慇懃な調子で、一切亜米利加式に生徒を紳士扱いにするのが癖だ。
「Mr. Kishimoto.」
と教授は人の好さそうな腮を捨吉の方へ向けて、何か彼からも満足な答を得ようとした。
「前にはよく答えたでは無いか、どうしてそう黙り込んで了ったのだ」と先生の眼が尋ねるように見えた。一度捨吉は眼に見えない梯子から落ちて、毎朝の礼拝にも、文学会にも、他の同窓の人達が我勝に名誉の賞金を得ようとして意気込んでいる華やかな競争演説にまで、ほとほと興味を失って