Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

た。彼は一切を破って出て行く気になった。

麹町の学校の方の仕事は妻子のある青木のために残して行こう。青木も骨が折れそうだ。そう思って捨吉は芝の公園へ訪ねて行った。この捨吉のこころざしを青木は快く受けいれたばかりでなく、自分にもし妻子が無かったら一緒に旅に上ったであろう、瓢遊はわが天性であるというほどの語気で捨吉を慰めてくれた。行く行くは青木のような友達の教え子として、勝子のことを考えるのも、せめてもの捨吉の心やりであった。

青木を訪ねたついでに捨吉は築地の菅の家へそれとなく別離を告げに寄った。相変らず菅は静かな、平な心持で、ある西洋人の仕事の手伝いなぞをしながら、独りでコツコツ勉強を続けていた。検定試験に及第して伊予の方のある私立学校の教師として赴任して行った足立の噂も出た。

「菅君、しばらく僕は旅をして来るかも知れない」

と捨吉は何気なく言って、この旧友にも青木等と一緒に同人の雑誌の仲間入をすることを勧めた。何等の嬉しいも悲しいもまだ知らず顔な旧友の話は、酷く捨吉には物足らなかった。

麹町の学校へも捨吉は最終の授業の日を送りに行った。彼は平素とすこしも変った容子の無い勝子を同じ組の他の生徒の間に見た。