Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

涼しい心持の好い風が来て面を撫でて通る度に、二人は地の上に落ちている葉の影の微かにふるえるのを眺めながら、互いに愛読したその翻訳物の話に時を送った。

幹事の告別の言葉があり、一同の讃美歌の合唱があり、ある宣教師の声で別れの祝祷があって、菅も捨吉も物のかげに跪坐ずいた頃は、やがて四時間ばかりも遊んだ後であった。御殿山を離れる前に、もう一度捨吉はそこいらを歩き廻った。山のはずれまで行って、独りで胸の塞がった日にはよくその辺から目黒の方まで歩き廻ったことを思出した。寄宿舎で吹矢なぞを造えてこっそりとそれを持出しながら、その辺の谷から谷へと小鳥を追い歩いた寂しい日のあったことを思出した。ふと、思いもかけぬ美しいものが捨吉の眼前に展けた。もう空の色が変りつつあった。夕陽の美は生れて初めて彼の眼に映じた。捨吉はその驚きを友達に分けようとして菅の居るところへ走って行った。友達を誘って来て復た二人して山のはずれへ立った頃は更に空の色が変った。天は焔の海のように紅かった。驚くべく広々としたその日まで知らずにいた世界がそんなところに閃いていた。そして、その存在を語っていた。