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Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

兄は何かにつけてお母さんに安心を与えようとする風で、その昔県会議員などをした人とも思われない程めっきり商人らしくなった前垂掛の膝をすすめ、長火鉢の側でお母さんにも弟にも手づから朝茶を注いで勧めた。

「御蔭でまあ大勝の大将には信用されるように成りましたし、浜には取引が出来ますし、田辺とは殆んど兄弟のようにして往ったり来たりしていますし……これまでに取付くというだけでも、なかなか容易では無かったんです」

こう兄はお母さんに言って、例の咳払いを連発させた。田舎の炉辺で灰を掻きならすと同じ手付でお母さんは兄と対い合った長火鉢の灰を丁寧に掻きならしながら、郷里の方に残して置いて来た嫂や、孫娘や、年とった正直な家僕の噂をした。お母さんと兄との間には、捨吉なぞのよく知らない話も混って出て来た。まだ世間見ずの捨吉にも、それが兄の借財に就いてであることは、容易に感知することが出来た。

「何か捨吉の許へも持って来たいとは思ったが、土産一つ用意する暇もあらすか。ほんとに今度は何処へも内証の旅だで」

と、お母さんは捨吉の方を見て言った。

「今織りかけた機があるで、そのうちに届けるわい」