Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
「お前は逃げたければ俺と一緒にこい。逃げるのが厭なら、かえれ」
高城の顔から急に血の気が引いた。岩角に靴を鳴らし後にすざりながら、青く燃えるような眼で宇治をにらんだ。宇治は表情を微塵も動かさず、じっとその動作を凝視した。暫く沈黙がつづいた。日の光が背に熱かった。突然高城があえぐような声で叫んだ。
「私は帰ります」
「よし、帰れ」
宇治は叩きつけるようにさけんだ。高城は両踵をそろえて宇治に挙手の敬礼をした。挙げた手がぶるぶる慄えた。宇治も視線を外らさず一寸片掌を上げた。高城はむこうをむくと崖縁の道を歩き出した。笑いがそのまま宇治の頬に凍りついた。右手が腰に行き、そろそろと拳銃を抜き出した。崖は一本道である。高城は一度も振り返らず、肩が小刻みに揺れながら遠ざかって行く。陽炎のようなものが立つのか像はゆらゆらする。岩角に銃身を乗せ、宇治は身体を曲げて岩によりかかった。片眼を閉じて頬を岩肌にあて、指を撃鉄にかけた。照星の彼方に高城の姿が小さく揺れる。あと三十秒もすれば角を曲るだろう。今撃鉄を引けば必ず当る。腕に自信はあった。打つぞ、と彼は思った。が頬に貼りついた笑いが急に消えて、彼は何か重いものに堪えるような顔付になって頭を上げた。