Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

彼はもはや人間を眺める目に遠近を失っていたのだ。支柱を失った人間は、彼には影を失った幽鬼に過ぎなかった。皆支柱を失っているのではないか。幽鬼の行為に美醜がある筈がない。

あの難行軍をつづけてサンホセに入ったとき、南口付近はマニラから逃げて来た海軍部隊が駐屯していた。宇治は高熱のため当番兵のはからいで一軒の民屋に寝た。そこも海軍が占拠していて、その家にはジャンパアを着た海軍軍属らしい男が住民の女と一緒に住んで居た。宇治の病気を知ると同情して、何処からか椰子やマンゴオの実を取って来て呉れた。軍属らしいと思ったら報道班員だと言う。仔熊のような眼をもった、恰幅のいい男だった。今は海軍の糧秣係の仕事をして居るらしかった。宇治はその男の名に記憶があった。ずいぶん前のことだが或る文学賞を得た男である。宇治は地方にいた時その小説を読んだ記憶がある。何でも氷山の上を渡り歩いて熊を射とめる小説であった。翌朝別れを告げる時その男は、急に真面目な顔になって、此の戦争が勝つにしろ負けるにしろ自分は此処に踏み止まり、一生此の女と(横にいる女を指さした)此の土地で暮すつもりだ、と宇治の耳にささやくようにしみじみと言った。