Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
だから自分の為に彼は歩いて来た。今更他の力や瞬間的な感傷のためにそれを曲げることは出来ない。彼は歩を移しながらも一度自分に言い聞かせた。
(今、高城のことで涙が流れそうな気がしても、それで思い止まる位なら、今朝隊長の薄い顱頂を見おろした時の感情で、俺は既に逃亡を思い止まった筈だ)
瞬間の感激のために人々が命を捨てるのを、彼は戦場で何度も眺めて来た。自分がそこに堕ちるのが恐かった。しかし此の度の逃亡もひょっとすると自分の束の間の感傷から出たのかも知れない。サンホセでの一箇月間毎夜逃亡を考えつづけていたような気がするのも、ただあの日々の重苦しさをそう考え違いしただけで、昨夜咄嗟に逃亡を思いついたのではないのか。彼は頭を振ってその思考から逃れようとした。
道は次第に林を離れた。向うに土手があるらしい。土手に向って歩きながら、宇治はふと或る危惧にとらえられた。
(花田と逢った時、高城が花田を射つかも知れない)
彼はふと険しい表情で高城の顔を振り返った。高城は怒ったような顔で見返した。射つなと言うと猶射つ気になるかも知れぬ。花田を殺せば万事解決出来ると高城は思うかも知れないのだ。