Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
拳銃であった。黒い銃口はまっすぐ宇治の胸にむけられていた。その部分の筋肉が生理的な予感にぎゅっと収縮するのを感じながら、彼は凝然と立ちすくんでいた。
(これだったんだな)
宇治は両腕を組んだまま、泣き笑いのような表情を浮べた。そしてそのままじっと動かなかった。女の左手はしっかと銃把を握り、人さし指がぐいと撃鉄にかかっていた。暗緑色の眼は乾いた光を放って、まっすぐに宇治の眼を射た。慄えも見せぬ黒い銃口の前で、彼は頬にも一度あの泣き笑いに似た表情を走らせていた。虚脱したような安定感が、いまは僅かに宇治の身体を支えていたのである。次々に生起して来る現実に抵抗しようとする力がようやく尽きかけて来たことを、彼は静かに感じ取っていた。
(今日一日、散々苦しんだ果てにこれがあったんだな。あの手付きでは、拳銃を撃つのも初めてではないらしいな)
……此の女は左利きらしいなと、彼は銃把を握る女の左掌を感じながらぼんやり考えていた。あの夜窓から覗いた時も此の女は、確かに左手で酒瓶を支えていたと、彼は頭の片隅に思い浮べていた。あの時ふかぶかと椅子に掛け、若く幸福そうだった花田の姿が、今は冷たく息絶えて宇治の背後に横たわっている。