Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
林をぬけると、やや広闊な草原があった。大きな栗の木が、その中央に生えていた。その木の下に、一人兵隊がいて、私の跫音にびっくりしたように振り返った。
四十を越したか越さない位の、背の低い男であったが、私はふと彼の手にした双眼鏡に目を止めた。私の不審そうな視線に、男は人なつこそうな笑いをちらりと見せて、はっきりした声で言った。
「見張です」
そう言えば、栗の木の幹を利用して電話が設けてあり、此の草原からは湾内も大空も一望の中にあった。草いきれの中を、私はその男に近づいた。
「あいているなら、双眼鏡を貸して呉れないか」
「ええ、いいですよ。お使いなさい」
双眼鏡を受取った。ずっしりと重かった。眼に当てて、ゆるゆる視野を移動した。
大正初年の爆発によって海水になだれ入った溶岩の岬が、すぐ目の前にあった。そのこちらが軍用の船着広場で、中央に中世紀の塔に似た放水塔があり、それに群れて水をくんだり洗濯したりしている兵たちの姿が見えた。そして油を流したような海。船着場にある発動機船、そして私の頭の回転につれて、双眼鏡の視野に、大きく桜島岳の全貌が浮び上って来た。
それは、青いものが一本もない、代赭色の巨大な土塊の堆積であった。