Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
痛みは三十秒程でおさまった。
「ひどく頭が痛いことがありますか?」
入院する前に医師が訊ねたことがある。その医者は三田村(碁を打っていた友人だ)の知己で、彼に伴われて私宅を訪ねたのである。面談した応接間はこぢんまりして、壁には風景画がかけられ、隅の卓には花が飾られていた。壁は布張りで、特殊の加工がしてあるらしく、声は壁に吸い取られて反響がなかった。
「いいえ」
五郎は答えた。
「痛くはないけれど、悲しいような憂欝な感じがあるんです」
「ずっと続けてですか?」
「いえ。続けてじゃない。時々強く浪のように盛り上って来るのです。いや、やはり続いているのかな」
五郎は首をかしげて、ぽつりぽつりと発言した。
「漠然とした不安感がありましてね、外出するのがいやになる。顔が震えそうだし、皆がぼくを見張っているようで、うちに閉じこもってばかりいます」
「閉じこもって、何をしているんですか」
「寝ころんで本を読んだり、テレビを見たり、歌をうたったり――」
「歌を?」
医者は手帳を出して、何か書き込んだ。
「どんな本を読むんです?」
「おもに旅行記とか週刊誌のたぐいです。むずかしいのはだめですね」