Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
戦争中にも啼いていた筈だ。どうして記憶から脱落したのか。戦争生活の荒々しさに紛れてしまったのか。
五郎は低い中二階の突上窓から顔をのぞかせ、しばらく外の様子をうかがっていた。この宿は坊のメインストリートから、すこし山手になっているので、家の屋根屋根が見える。瓦は関東などと違って、きめがこまかく、しっとりした微妙な美しさをたたえている。道が見えるが、人通りはほとんどない。まだ戸をしめている家さえある。五郎は眼を鷹のように光らせ、人や鳥の動きに注意を払っていた。
〈おれは密航者だ〉
だんだんそんな気分になって来る。この部屋だって、そうだ。あかずの間やかくれ納戸や飛び降り障子や、ふしぎな造りになっている。何故そんな造り方をしたのか。密航者のためのものだという以外には考えられない。五郎は眼を細くしたり太くしたり、顔を傾けたりして、約一時間外界の動きを観察していた。やがて鴉の数が少しずつ減り、喧声もおさまり始めた時、五郎はやっと腰を上げ、とんとんと階段を降りて行った。風呂場で顔を洗うと、階下に食事の用意がととのっていた。
庭に面した部屋で朝食をとる。庭にはサボテン、鶏頭、ゼラニューム、その他の花が咲いている。