Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
〈こんなものだ〉
彼は声にならないうめきを洩らしながら思う。渇仰に似た欲望が、しずかに彼の体を充たして来た。
〈こんなに厚みがあって、ゆるぎなく、したたかなもの――〉
「お客さん。足がえれえ弱っちょるね。もうすこし足ばきたえなっせ」
「だから明日は山に登るんだ」
「ちゅうばってん、阿蘇は頂上まで、バスが行くとですよ」
女は足から降りた。
「そんなにかんたんに行けるのか。では、火口を一廻りする」
五郎は正座に戻り、女の顔を見た。
「君もいっしょに行かないか。どうせ昼は暇なんだろう」
「暇は暇ですばってん――」
女は彼の背後に廻った。頭の皮膚を押し始めた。佐土原あんまと同じやり口である。頭の皮は動いても、頭蓋骨は動かない。皮と骨の間に漿液か何かが、いっぱいつまっているらしい。それが皮をぶりぶり動かせるのだ。
「汽車の切符も弁当も、用意しておくよ」
女はしばらく黙っていた。すこし経って、
「悪かことば聞いてんよかね?」
「いいさ」
「お客さんはお金ば持ち逃げしたとでしょう」
五郎の眼はつり上った。自分でつり上げたのではなく、女の指の動きで、自然にそうなったのだ。
「よく判るね」