Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
丹尾は歩いている。立ち止って、火口をのぞく。その真下に噴火口がある。五郎は望遠鏡を下方に移す。壁は垂直に火口から立っている。火口には熱泥がぶくぶくと泡立っている。
〈あそこに飛び込めば、イチコロだな〉
眺めているのが苦痛になって来たので、彼は荒々しく望遠鏡を上げる。高岳や根子岳、外輪山、その果てに遠くの山脈が重なり合っている。その上にすさまじい青さで、空がひろがっている。時間が来て、まっくらになる。五郎はまた十円玉を入れた。ふたたび視野に、丹尾の姿が戻って来た。
丹尾はトランクを下に置き、それに腰かけていた。ハンカチで汗を拭いている。拭き終ると、立ち上る。トランクを提げて歩き出す。くたびれたのか、足の動きが緩慢だ。ちょっとよろよろとした。石につまずいたのだろう。丹尾を見ているのか、自分を見ているのか、自分でも判らないような状態になって、五郎は胸の中で叫んでいる。
「しっかり歩け。元気出して歩け!」
もちろん丹尾の耳には届かない。また立ちどまる。汗を拭いて、深呼吸をする。そして火口をのぞき込む。……また歩き出す。……立ちどまる。火口をのぞく。のぞく時間が、だんだん長くなって行くようだ。