Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
地面を這うようにして縁側までたどりつくと、爺さんは沓ぬぎにうつ伏せになって、肩の動き具合から見ると、虫のようにしくしく、長いこと泣いていましたよ。ほんとに長い間」
男は上半身を起した。
「先刻見えたでしょう。あれが、その縄なんです」
私は、ふっと此の男に嫌悪を感じていた。はっきりした理由はなかった。少し意地悪いような口調で、私は訊ねた。
「で、いやな気持がしたんだね」
「――残酷な、という気がしたんです。何が残酷か。爺さんがそんな事をしなくてはならないのが残酷か。見ていた子供が残酷か。そんな秘密の情景を、私がそっと双眼鏡で見ているということが残酷なのか、よく判らないんです。私は、何だか歯ぎしりしながら見ていたような気がするんです」
男は、首を上げて空を眺めた。太陽は、ぎらぎらと光りながら、中空にあった。
「そうですかねえ。人間は、人が見ていると死ねないものですかねえ。独りじゃないと、死んで行けないものですかねえ」
男は光をさえぎるために、片手をあげた。強い光線に射られて、男の顔は、まるで泣き笑いをしているように見えた。
午後の当直を終えて外に出ると、夕焼雲が空に明るかった。