Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
私は窓に腰かけたまま、じっと女の端麗な横顔に見入っていた。
「こわいわ」
視線を避けるように、妓は一寸横を向いた。かすかに身ぶるいしたようであった。一瞬、右の半面が乏しい電灯の光に浮き上った。地のうすい頭から、頬がすぐにつづいていた。耳のついているべき部分は、ある種の植物の実の切口のように、蒼白くすべすべしていた。
「瞼を、どうしたの」
「崖から落ちたのさ」
「あぶないわね」
私は立ち上って上衣を脱いだ。そして、時間が過ぎた。何の感興もない、ただ自分の肉体の衰えを意識するだけの短い時間のあいだ、私はぼんやり外のことを考えていた。此の町に、小さな汽車に乗ってやって来た。明朝はやくバスに乗って去る。一生のうち、初めて訪れた町であり、もう訪れることはない。此のうらぶれた妓楼の一夜が、私の青春のどのような終止符の意味をもつのだろう。私は窓の下を通る貨物列車の音をわびしく聞きながら、妓と会話をかわしていた。
「桜島?」
妓は私の胸に顔を埋めたまま聞いた。
「あそこはいい処よ。一年中、果物がなっている。今行けば、梨やトマト。枇杷は、もうおそいかしら」
「しかし、私は兵隊だからね。