Japanische Klassiker mit Furigana
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しいのき
椎の木
豊島 与志雄
Lesen Sie 椎の木 (しいのき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.870 Zeichen · 52 Bildschirme
粗末なじみな服装で、少い髪の毛を無雑作に束ねた、四十二三歳の女だった。すっきりした眉と肉のおちた頬に、或る淋しげな品をもっていて、※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)のまるみに、やさしい温良さが現われていた。相当な生活をしてきたひとで、中年になって突然不幸にみまわれて零落し、その運命にあきらめて落付いている、そういった人柄に見えた。
とびこんできた青年の姿を、彼女は、小さな子供をでも見るようなやさしい目付で迎えた。
青年は外套をぬぎすてて、その前に膝をそろえて坐った。
「ただいま。」
古いすりきれたものではあったが、ともかくも背広服の、その姿が、外を歩いてた時とはまるで別人のように善良だった。
女は赤いはでな仕立物をわきに押しやって、お茶をいれていた。
「早かったですね。」
「お留守なんです。」
「そう。」と気のない返事だった。
「待ってればよかったんだが……。」
その時初めて彼は良一のことを思い出したように、急いで立ってきた。
「さあ、どうぞ……。」
云わるるままに良一はあがっていくと、母です、と彼は云いすてて、横手の室へ案内した。
そこも六畳で、机と本棚とが高窓の下にあって、本棚と並んで、大きな卓子があった。