Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しいのき

椎の木

豊島 与志雄

Lesen Sie 椎の木 (しいのき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.870 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

卓子の上には、いくつもの瓶や鉢が混雑していて、大きな赤い電球が一つころがっていた。多分そこで彼は写真の現像をするのであろう。

彼は押入から黒い箱をとりだした。中にはたくさん写真がはいっていた。それを順次に、畳の上に、並べ初めた。

「茂樹さん?」

咎めるような声に、彼は顔をあげて、襖のかげから覗いてる母親を見た。

「あ、このひと、川村さんの親戚なんですよ。僕の味方です。」

「まあ、左様でございましたか。」と母親は丁寧に頭をさげた。「先生には、もう始終お世話になっておりまして……茂樹がいつも……。」

あとは口籠って、うつむいて涙ぐんでしまった。良一は、挨拶のしように困った。

茂樹はもう畳の上に、小さな写真を並べながら、母親のことも忘れてるようだった。写真が並ぶに従って、後へしざってゆき、母親はそれに押出されるようにして、黙って襖の向うにかくれた。

古い汚れた畳の上に、不思議な光景があらわれた。正面だの横向だの、或は顔半分など、瞬間のスナップの小さなものだが、そうした人間の顔がずらりと並ぶと、その一つ一つが妙に生きあがってきて、何か意味をもつようだった。その上、並べ方の順序に、驚くべき統一調和があった。