Japanische Klassiker mit Furigana
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えのきものがたり
榎物語
山本 周五郎
Lesen Sie 榎物語 (えのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.519 Zeichen · 67 Bildschirme
河見家でも死躯のあがったのは主人の半左衛門だけ、あとは信濃川まで流されたか、泥の下に埋まったままか不明であった。さわ自身も小出の下まで流され、河原の泥に首まで埋まっていたのを、危うく掘り出されて助かった。いまでも、もと葉川村の付近からは、ときどき遺骨の出ることがあるけれど、誰のものとも区別はつかず、この柳原宿の源宗寺の無縁墓に入れられるのであった。
おすげは毎日かよって来た。土風炉を炊くための、細い焚木を作ったり、水を汲んだり、客があると座を設けたり、あとの洗い物をしたり、結構してもらう用事もあったし、客のないときには話し相手にもなった。はつという女中の云ったとおり、おすげはごく眼立たない人柄だった。顔かたちや躯つきにも特徴はないし、話題も少なく、立ち居や動作もはきはきしなかった。ただ、健次という男の話になると、表情がにわかに活き活きとし、眼にも強い光があらわれて、その平凡な顔が美しくさえみえるようであった。
「ええそう思ってます、あの人は生きてるし、いまにきっと会えるに違いありません」とおすげは繰り返すのであった、「まだ三年しか経っていないんですもの、あの人にだって都合のつかないことがあるんでしょう、ええ、そのときが来ればきっとあなたにもわかってもらえますわ」