Japanische Klassiker mit Furigana
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やりがたけだいさんかいとざん
槍ヶ岳第三回登山
小島 烏水
Lesen Sie 槍ヶ岳第三回登山 (やりがたけだいさんかいとざん) von 小島 烏水 (こじまうすい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.115 Zeichen · 11 Bildschirme
雨で閉じこめられた、赤沢小舎の一夜が明ける。前の日、常念岳から二の股を下りて、私たちの一行より早く、この小舎に着いていられた冠君は、今朝も早く仕度を済まされ、「お先へ」と言って、人夫どもを連れて出て行かれる、「若い衆天幕取れやい」と嘉門次の号令がかかる、天幕を組み立てた糸がスルスルと手繰られて、雫のポタポタする重い油紙が、跪まずくように岩盤の上に折り重なる、飯を炊いだあとの煙が、赤樺の梢を絡んで、心臓形に尖った滑らかな青葉を舐めて、空へって行く、その消えぎえの烟の中から、人夫が一人ずつ、荷をしょっては、ひょッくり、あらわれる、嘉門次の愛犬「コゾー」もこの登山隊の一員として交っている。
嘉門次が一行の案内を務めるのは、言うまでもない、雨でグッショリ濡れた青草や、仆れている朽木からは、人の嗅覚をそそるような古い匂いがして、噎びそうだ、足が早いので、一丁も先になった嘉門次は、私を振り返って「他所の人足は使いづらくて困る」とブツブツ言いながら、赤石の河原に出た。
見上げる限り、花崗の岩壁が聳えて、その壁には白い卓子懸けのような雪が、幾反も垂れている、若緑の樺の木は、岩壁の麓から胸まで、擦り切れる