Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
「私は野中又五郎という者ですが」とその侍は云った、「柿崎さんは御在宅ですか」
「ただいま留守でございます」とおみやが答えた。
浪人は「はあ」といった。その顔に失望の色がつよくあらわれ、おみやから眼をそらして、溜息をついた。
――どういう人だろう。
とおみやは思った。兄のところへは訪ねて来る者は殆んどない、兄にもつきあう者はあるようだが、この家へ伴れて来ることはなかった。人とのつきあいは外だけに限っているのだろう、野中というその浪人も、おみやは初めて見る顔であった。
「なにか御用でしょうか」とおみやが訊いた。
「困ったな」浪人は困ったなと繰り返した。いかにも途方にくれたという云いかたであった。
「お帰りはわかりませんか」
「昨日でかけたままですから、今日はたぶん戻るだろうと思いますけれど」
新八にもその問答が聞えた。
彼は戸口の声が侍だとわかったとき、伊達家の追手ではないかと思い、かっとなりながら、濡れた躯をよくも拭かずに、手ばしこく着物を着た。彼が着物を着てしまい、こちらの六帖でようすをうかがっていると、侍はまもなく帰ってゆき、おみやが戻って来た。
「誰ですか」