Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
「来ないで下さい」新八が云った、声はまだおののいていた、「こっちへ来ないで下さい」
「ええいいわ、いかないわ、おとなしくするわ、だからあんたも戻って来て」
「私は此処にいます」
「もう決してなにもしないから、ねえ、お願いよ新さん」
「来ないで下さい」
「ゆきゃあしないことよ、ほら、こっちにいるじゃないの」
「構わないで寝て下さい、私は少しこうしています」
「だめよ、そんなこと、もうしないってあやまってるじゃないの、お願いだから戻って寝てちょうだい、お願いよ、新さん」
「私は少しこうしています」
新八はその三帖で坐った。
おみやはなおくどいた。新八はもう返辞をしなかった。おみやは戻って行燈に火をつけ、ではあたしは寝ます、と云った。新八は黙っていた。おみやは本当にもうなにもしない、と誓い、あたしが眠って、もう安心だと思ったらあんたも寝てちょうだい、と云った。
新八は壁に背をよせて坐っていた。おみやは寝床の中へはいった。
――こんなことになるだろうと思った。
彼は心のなかで思った。寝しずまった夜半すぎの床下で、しきりにこおろぎが鳴いていた。新八はそっと手の甲で眼を拭いた。