Japanische Klassiker mit Furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 148.519 Zeichen · 296 Bildschirme
「貴方は、――」
七十郎は盃を置いた。甲斐は静かに彼の眼をみつめた。あたたかい光を湛えた、静かな視線であった。七十郎は眼をそらした。
「貴方にはかなわない」と彼は云った、「だが、これだけははっきりさせておきます、侯が幕府から逼塞を命ぜられた理由は、侯が薫という遊女にのぼせて、放蕩に身をもち崩したからだということです、しかし実際はどうかというと、侯が京町へかよわれたのは僅かに八日か九日、それもただ酒を飲んで帰られただけで、相手の妓は侯がたれびとであるかも知らず、お顔さえよく覚えてはいないんです。いったいこれが放蕩といえるでしょうか」
七十郎はすばやく十左の顔を見た。
「曲輪がよいをする諸侯はいくらでもいます」と七十郎は云った、「名をあげてもよろしい、五人や七人はすぐあげることができますよ、いま云った中国筋の、薫という妓にかよいつめている大名、それから榊原」
「おくみ、酌をしてやれ」と甲斐が云った。
「よろしい、わかりました」七十郎はおくみに頷いた、「他家のことはやめましょう、ただ、諸侯のなかにも曲輪がよいをする人はたくさんあるし、珍らしい例ではないということを忘れないで下さい、――にもかかわらず、侯だけが譴責された、六十万石の、まだ二十歳そこそこの若い大守が、僅か八日か九日、お忍びで曲輪へかよったというだけで、放蕩