Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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けんりょくのひげき

権力の悲劇

宮本 百合子

Lesen Sie 権力の悲劇 (けんりょくのひげき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.912 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

八月のある日、わたしは偶然新聞の上に一つの写真を見た。その写真にとられている外国人の一家団欒の情景が、わたしの目をひいた。背景には、よく手入れされたひろい庭園と芝生の上に、若い父親が肱を立ててはらばい、かたわらの赤ン坊を見て笑っている。片手は軽くその赤ン坊の縫いぐるみのおもちゃらしいものにふれている。赤ちゃんは男の児である。肥だちよくくりくりと丸くて、夏の白いベビイ服の短袖から、くびれて可愛い腕がむき出ている。日本でいえば丁度はいはいごろの赤ちゃんである。笑うような、さてまた不思議がるような表情をカメラに向けているあどけなさ。そのあどけなさにひき入れられて、自分も芝生の上にくつろいで片肱つきながら見とれている若い母親。その母親の笑顔は、赤ちゃんの無邪気さ、愛くるしさにとけ入って、はた目を忘れた瞬間のほほえましさで輝やいている。自然も人間もそこにそうして在ることに、何と安らかさがたたえられている情景だろう。

いまの日本で、こういう写真を見るとめずらしい気もちが起る。写真につけられている説明をよんで、わたしは、ひとしおしげしげとその写真を眺めなおした。