Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅいんざっき
樹蔭雑記
宮本 百合子
Lesen Sie 樹蔭雑記 (じゅいんざっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.566 Zeichen · 10 Bildschirme
数冊の本の中に、安成二郎氏の恋の絵巻という本がある。その表題に一寸母上が何故其を送ってよこされたかが疑われた、が、目次を見て、其中に自分の事が書いてあるらしいので、送られた理由が分った。
読んで見ると、好意のある文句で、自分の未来を期待して居る文句がある。
多分母上は其を見て、私にも送って見せてやりたいと思われたのだろう。
フト心に陰がさした。
翌日読んで、思わず考えに耽った、戯作三昧の馬琴の心持を、又思い出さずには居られない。
馬琴は、何も、眇の小銀杏が、いくら自分を滅茶にけなしたからと云って、「鳶が鳴いたからと云って、天日の歩みが止るものではない」事は知って居るのである。よく分って居るのである。
けれども、けなされれば心持の悪いという事実は瞞着するに余り自明である。
其の気分を読んで、自分は思わず溜息をついた。そうだ。真個にそうである。
何に、彼那人が彼那事を云ったって、自分の生命の価値に何の損失も与える事は出来ないのだ、とは思う。又思うのみならず其を信じて疑わない。けれども、信じ安じるべきであるに拘らず、その不愉快さは依然としてドス黒いかたまりを、朗らかな胸中に一点の波紋を保って存在して居るのである。