Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅいんざっき
樹蔭雑記
宮本 百合子
Lesen Sie 樹蔭雑記 (じゅいんざっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.566 Zeichen · 10 Bildschirme
六月二日
静かな快い日である。朝起きて、下の郵便局に行って見ると、抱え切れない程の小包が来て居る。皆日本からだ。仕方がないから、又家へ戻って、Aを呼んで半分ずつ抱えて帰る。
此の毎朝起きて着物を着るとすぐ何より先に、郵便局に出かけて行く心持は、恐らく、誰でも、海外に生活した事のある人は味わずにはすまされない心の経験であろう。
嬉しい。仮令一枚の葉書でも、故国から来たものとなると、心持が異う。毎朝、小さい鍵で、箱の蓋を開けるとき、自分は必ず丸い大様な書体で紙面を滑って居る母の手跡を期待して居る。
自分が其那に待ちながら、同じように待って居るに異いない母へ、屡々音信をしないのは、気の毒だと思わずには居られない。
今日も、先月中に御たのみした原稿紙や本や雑誌やらが、ふんだんに届いた。よく気をつけて、こちらでは得難い雑誌を送って下さる心持は、心からの感謝である。高い本を注文しても、見つかりそうもないものを御ねがいしても直ぐどうにかして送って下さる。
親だと思う。生れたときから其那注意で育てられたのかということを、今特に強く思う。有難いのと畏しいのと一緒に心の中に蠢くのを止える事は出来ない。