Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅいんざっき
樹蔭雑記
宮本 百合子
Lesen Sie 樹蔭雑記 (じゅいんざっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.566 Zeichen · 10 Bildschirme
家々の屋根や日覆が、日没前の爛れたような光線を激しく反射する往来は、未練する跡もなく撒き散して行った水でドロドロになって、泥から上るムッとしたいきれが、汗じみた人の香と混って、堪らなく鼻をつく。
皆が電車を待って居る。学校帰りの学生、事務所をしまった人々、職人、交換手、そういう種々雑多な人々が、各自に違った汗を掻きながら、泥を白い足袋の上にハねかえし右往左往するのを思うと、今斯うやって、静かな水の辺で、電車の音もきかずに居るのは感謝すべきである。暑いと云ったりする事は寧ろぜいたくであろう。
○静かな静かな寂しさの裡に夜は更けて行った。彼女は、読みかけて居た本を伏せると、深い息をつきながら、自分の周囲を見廻した。
白地の壁紙、その裾を廻って重くたれ下がって居る藁の掛布、机、ランプスタンド、其等は、今彼女の手にふれる総ての書籍が、遠い故国の母の手元から送られたものであると同様の有難さをもって、彼の手に作られたものである。
地下室の隅から塵だらけになって引出された板、其を日に乾し、水で洗い紙に包んで、丈夫な、使い心地のいい机に仕てくれたのは彼である。