Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じゅいんざっき

樹蔭雑記

宮本 百合子

Lesen Sie 樹蔭雑記 (じゅいんざっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.566 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

十日

夜一時半

夜露が深く湖面に立ちこめると見えて、うすらつめたく湿った空気があけた窓から入って来る。

明日は雨にでもなるかと思って、フト外を眺めると、何か、小さく光るものが目にとまった。

私が窓の方へ目を向けた其瞬間、フーッと光ったような気がした丈で、あといくら見なおしてももう二度と眼にうつらない。

私は計らず、死にかかって居るジューの女房の事を思い出して、堪らなくゾッとして来た。

彼女は先妻の妹である。まだ年は若いのだが、彼女の姉が死んでまだ間もなく先の夫と結婚したのだが、神経病で死にそうだと云う。

雷のひどくなる晩、*を見て居て、ひどくショックを受けたのだと云う。

けれども、先妻の死んだ部屋だというのだから、まだ年の若い其女は何か迷信から、そんなになってしまったのではあるまいか?

只さえ人気ない夜陰の物さびしさが、此の急な連想で驚くほど無気味なものにさせられた。

伝説に深い趣味を持って居る自分は伝説にまける。

人間の心の微妙さを信じる自分は、種々の例外を認める。

従ってひどく臆病である自分は、明けはなした窓から、際限もない夜の暗に覗かれるのはたまらない。