Japanische Klassiker mit Furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme
親子兄妹が同じ町内に住んでいながら、顔を合せば畳の上へ額を擦(す)りつけて礼をするのも、奇怪以上に美しく梶は見惚(みと)れるのであった。稲穂の実り豊かに垂れている田の彼方(かなた)に濃藍色(のうらんしょく)に聳(そび)える山山の線も、異国の風景を眼にして来た梶には殊の他(ほか)奥ゆかしく、遠いむかしに聞いた南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)の声さえどこからか流れて来るように思われた。
梶はこの風景に包まれて生れ、この稲穂に養われて死ぬものなら、せめてそれを幸福と思いたかったのが、今にしてようやくそれと悟った楽しさを得られたのも、遅まきながら異国の賜物だと喜んだ。全くこの独特な小さい稲穂の中で、押し合いへし合い捻(ね)じ合いつつ、無我夢中に成長して来たわれらの祖先の演劇は、何ものの中にも血となり肉となりしてこり塊(かたま)っていることこそ争い難い事実であった。
笑わば笑え。真正真銘の悲劇喜劇もこれに増した痛烈な事件はあるまい。――こう梶の思う心の中で、ヨーロッパの知性に飛びついている顔が、足をぶらぶらさせていったい何を笑っているのか判然としなかった。
世の中はぜんたいどこへ行くのであろう。