Japanische Klassiker mit Furigana
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はるはばしゃにのって
機械・春は馬車に乗って
横光 利一
Lesen Sie 機械・春は馬車に乗って (はるはばしゃにのって) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 77.492 Zeichen · 156 Bildschirme
エホバよ、かくて幾その時をへたもうや。死にありては汝(なんじ)を思い出(い)ずることもなし」
彼は妻の啜(すす)り泣くのを聞いた。彼は聖書を読むのをやめて妻を見た。
「お前は、今何を考えていたんだね」
「あたしの骨はどこへ行くんでしょう。あたし、それが気になるの」
――彼女の心は、今、自分の骨を気にしている。――彼は答えることが出来なかった。
――もう駄目だ。
彼は頭を垂れるように心を垂れた。すると、妻の眼から涙が一層激しく流れて来た。
「どうしたんだ」
「あたしの骨の行き場がないんだわ。あたし、どうすればいいんでしょう」
彼は答えの代りにまた聖書を急いで読み上げた。
「神よ、願くば我を救い給え。大水ながれ来(きた)りて我たましいにまで及べり。われ立止(たちと )なき深き泥の中に沈めり。われ深水(ふかみず)におちいる。おお水わが上を溢(あふ)れ過ぐ。われ歎きによりて疲れたり。わが喉(のど)はかわき、わが目はわが神を待ちわびて衰えぬ」
彼と妻とは、もう萎(しお)れた一対の茎のように、日日黙って並んでいた。しかし、今は、二人は完全に死の準備をして了った。もう何事が起ろうとも恐がるものはなくなった。