Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 117.781 Zeichen · 235 Bildschirme
しかし、答えはどちらからもなかった。二人はただ微笑しているだけだった。
「それで、本田さんは、あの意味、ご自分でお解きになりましたの?」
「そりゃあ解いたとも、さすがに苦しんだだけあって、お前なんかのように二日も三日もひねりまわしてはいないよ。そこが遊びと血の出るような体験とのちがいでね。」
「まあ、遊びだなんて。」
と、奥さんは、心からの不平でもなさそうに笑いながら言ったが、急に眉根をよせて、
「でも、本田さん、そんなにお苦しみになりまして?」
「そりゃあ、本田の年頃にしちゃあ相当の苦しみだったろうよ。とにかく料理屋のお内儀を相手に鑿をふるおうというんだからね。」
「鑿を?」
奥さんは眼を円くして次郎を見た。
「はっはっはっ。鑿って、さっきのミケランゼロの話だよ。本田は、つまり、そのお内儀を女神に刻みあげてやろうというわけだったんだ。」
「あら、そう。あたし、すっかりほんとうの鑿かと思って、どきりとしましたわ。ほほほ。」
「まさか、ごろつきではあるまいし、ねえ本田。」
と、朝倉先生は、また大きく笑った。
次郎は、しかし、少しも笑わなかった。彼は、むしろ、いくぶん暗い顔をして二人の話に耳を傾けていたが、先生の笑い声がしずまると、だしぬけに言った。