Japanische Klassiker mit Furigana
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うたまろざんげ
歌麿懺悔
邦枝 完二
Lesen Sie 歌麿懺悔 (うたまろざんげ) von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.396 Zeichen · 23 Bildschirme
「そうでござんすよ。是非ともお目に掛って、お願いしたいことがあるとおっしゃって。……」
「どういう御用か知らねえが、お旗本のお使いならなおのこと、こんな態じゃお目に掛れねえ。――御無礼でござんすが、ふせっておりますからと申上げて、お断りしねえ」
歌麿の、この言葉が終るか終らないうちであった。「お師匠さん、その御遠慮には及びませんよ」といいながら、庭先の枝折戸を開けて、つかつかとはいって来たのは、大丸髭に結った二十七八の水も垂れるような美女であった。
「これアどうも、こんなところへ。……」
あわてる歌麿を、女は手早く押し止めた。
「あたしでござんす。おきたでござんす」
「え。――」
鋭く、窪んだ眼を上げた歌麿は、その大丸髷が、まがう方なく、嘗ては江戸随一の美女と謳われた灘波屋のおきただと知ると、さすがに寂しい微笑を頬に浮べた。
「おお、おきたさんか。――ここへ何しに来なすった」
「何しにはお情ない。お見舞に伺ったのでござんす」
辷るように、歌麿の傍へ坐ったおきたは、如何にもじれったそうに、衰えた歌麿の顔を見守った。――二十の頃から、珠のようだといわれたその肌は、年増盛りの愈冴えて、わけてもお旗本の側室となった身は、どこか昔と違う、お屋敷風の品さえ備わって、恰も菊之丞の濡衣を見るような凄艶さが溢れていた。