Japanische Klassiker mit Furigana
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うたまろざんげ
歌麿懺悔
邦枝 完二
Lesen Sie 歌麿懺悔 (うたまろざんげ) von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.396 Zeichen · 23 Bildschirme
向うからいわれるまでもなく、直ぐさま己が膝下へ引寄せずにはおかない筈なのだが、しかし手錠の中に細った歌麿の手首は、じっと組まれたまま動こうともしなかった。
「お師匠さん」
「――」
「お前さんは、殿様のお世話になっているあたしが、怖くおなりでござんすか」
「そうかも知れねえ。おれアもうお侍と聞くと眼の前が真暗になるような気がする」
「おほほほ、弱いことをおっしゃるじゃござんせんか。そのような楽な手錠なら、はめていないも同じこと、あたしが外して上げましょうから、いっそさっぱりと。……」
おきたは如何にも無造作に、歌麿の手錠に手をかけた。
「あ、いけねえ」
「そんな野暮な遠慮は、江戸じゃ流行りませんよ」
ぐいと手錠を逆に引張った刹那、歌麿は右の手首に、刺すような疼痛を感じたが、忽ち黒い血潮がたらたらと青畳を染めた。
「あッ」
さすがにおきたは、驚いて手を放した。
「飛んだことをしてしまいました。――」
手速く、帯の間から取出したふところ紙は、血のにじんだ歌麿の手首に絡みついていた。
「お痛うござんすか」
「――」
「何かお薬でも。……」
が、歌麿はうつむいたまま、一言も発しなかった。